ケルナー馬頭琴 製作日記(2)

 < 胴工程2 >

 表裏甲板の加工が終了したら次に側板の製作に進みます。

馬頭琴の胴は台形になります。

サイズは、上辺180mm×下辺275mm×脚部(左右の斜辺)310mm

で厚さ70mmの台形枠を作成します。

材種は桐で厚さ4mmのものを用意します。

 

板どうしの接合方法には、ダボ継・留め継・組継・トンつ継(俗称イモツギ)等

何種類もありますが、馬頭琴の場合接合角度が90度ではないので俗にゆうバカ留め継

で接合します。

上部は90度より鈍角、下部は鋭角になりますが、それぞれ接合部の小口を半分の角度

で切断して張り合わせるのをバカ留め継といいます。直角より難しいですね。

左右の脚部を同時に切断すればピッタリ左右同じ角度になります。

バカ留め継の接合ではゴムバンドで左右の対称を見ながら同時に絞めて接着します。

作業にスピードが要求される為、撮影する余裕が無く、画像がアップ出来ず済みません。

 

枠の加工が終了しましたら、表裏板を接着します。

接着には、クランプ、ゴムバンド等を用いますが、甲板のアーチ部に強い圧力が

掛からないよう注意が必要です。

接着剤には、膠とタイトボンドを使い分けています。

後日、取り外してリペアーする可能性のある箇所には、膠を使います。

音響的な影響という点では、どちらも大きな差は無いとというのが、わたくしの経験上

の見解です。

 

 つぎにいよいよネックの製作に入ります。

馬頭琴のネック(棹)には、ご存知の通り馬の頭部が彫刻されています。

この彫刻の為、馬頭琴の量産が難しいとされる理由の一つです。

でも、ここが製作l家の腕の見せ所と楽しみでもあります。

                                                        

ケルナー馬頭琴頭部モノクロ

 

ネック材はなるべく硬い材種を用います。

弦の張力に負け、ソリが出て弦高が高くなるのを避ける為です。

今回は、メイプル材(継ぎナシ材)を使いました。

 

メイプルは堅材ですので、角材からいきなり頭部を彫刻するのには大変手間と労力が掛かります。

そこで、おおまかな形状をテンプレート(雛型)を使って木取っておきます。

ケルナー馬頭琴頭部テンプレート

                                                           ヘッド部テンプレート

 

次にイメージラインをスケッチしておいて、ノミ・彫刻刀で根気よく彫ってゆきます。

動物の顔は人・猿類意外は左右を正面から見ることが難しく、また木目も逆になりがちな為、

左右の違いが出てしまいがちです。時々反対側を確認しながら彫り進めていくのがポイントです。

 

頭部の彫刻が終了したら、胴に接合します。

弦楽器のネックの接合方式には、ダボ接合・アリ(ホゾ)接合・スルーネック式と

ありますが、わたくしはいつもアリ(ホゾ)式で行っています。

アリ式の中に、両アリ式という方法があります。

これは、突起部分(楽器の場合はネック側)のアリに、差し込む方向と引っ張られる方向

の両方にテーパー加工(逆ハの字型)をします。

そして受け側の溝にも同じテーパーの溝を彫って差し込みます。

こうすることによって、差しこむほどに両接合面に力が加わり引っ張り方向に対して

強い耐久力が得られ、また逆ハの字型の加工により完全に抜けなくなります。

テーパー角は70°~75°が最適とされています。

 

ネックの取り付けは一発勝負でやり直しが出来ませんので、胴の中心線に沿うよう、また

設定した駒の高さが出るよう、アリと溝の合わせを調整しながらネック角を決めていきます。

何度も確認し、問題なければ接着剤を着け差込みます。

アリと溝の加工が完璧なら、クランプ固定の必要はないでしょう!

 

 

ケルナー馬頭琴カカト接合部

 

次に、ネックの接合が出来たら指板の取り付けをします。

フレットを打ち込んだ完成指板を接着する方法と接着してからフレットの打込みをする方法がありますが

わたくしは指板を接着した後にフットを打込みます。

この理由は、指板接着後 完全に接着材の水分が抜けてから指板のレベリングを出したほうが、狂いが少ない

為です。フレット打ち後の摺り合わせ量も最小で済みます。

いずれの手順においても、指板の接着前にネックの反りがなくストレートである事が必須条件です。

                  (フレット摺り合わせ作業については、製作日記(3)で説明します。)

どちらにも長所短所があり、生産性も含めてどちらが正しいとは断定出来ないところです。

 

 そしていよいよ、フレット打ち作業です。

ここで、ケルナー音律の登場です。

まだオフィス・ドルチェのホームページで古典音律のページやサイトをご覧になっていない方には、音律

とかケルナーが何か、把握出来ていないかと思われますので、この点も含めて次回、製作日記(3)で

詳しく説明する事にしまして、製作日記(2)はこれまでとさせていただきます。

今回も最後までご覧戴きありがとうございました。