ケルナー馬頭琴 製作日記の第4回はアセンブリー(組立)編です。
塗装完了した本体、ペグ(糸巻)、テールピース、駒、弦を取り付けセッティングをしていきます。
まず、各ピースの画像を掲載しながら説明していきます。
はじめに、ペグ(糸巻)です。
オフィス・ドルチェ製の馬頭琴には、ゴトー(GOTOH)製チェロ用ペグを採用して
いましたので、今回も同じモデルを取り付けます。
材質はアルミ製で、ネジによる締め付けトルク方式になっています、
従来のテーパー式木製ペグは、テーパー穴に強く押し付けながら微妙なチューニング
をしなければならず、ビギナーにはなかなか難易度が高いものでした。
トルク方式では、ギヤーペグのように、ちいさな力でも調整する事が出来、馬頭琴によくある
糸巻のトラブル解消にもなります。
ただ、このモデルはゴトーさんで廃盤になってしまいました、残念ですが!
取り付け穴は、同径貫通になりますので、作業はいたってシンプルです。
次に、ブリッジ〔駒)です。
このブリッジはヴィオラ用のものを少し改造して使いました。
ブリッジ調整のポイントは、表甲のアーチ状の曲面に脚部が良くフィットしていることと、
弦を張った時にアーチ状の表甲面に垂直に安定するよう脚部の裏を加工する事です。
今回のスケール(弦長)は650mmですので、とりあえず325mmの位置にセットし、
1/2弦長の12フレットでの実音とハーモニクス音が同音程になるよう微調整します。
調整巾が高音弦と低音弦では差が生じますので、ブリッジが若干斜めになりますがそれで正解です。
24フレットでもチェックすればより精度が上がります。
弦は、ギターと同じE・B・Gチューニングですので、アコースティックギター用の弦を張れば間違い無い
ですが、やはりギターを弓で弾いてる音になります。
音色にはそれぞれの好みがありますので、いりいろな弦で試すのも楽しいかなと思います。
今回は、ハープシコードの弦を使ってみました。
最後にテールピースです。
3弦用の専用テールピースは手作りになります。
テールピースにはアジャスターを取り付けます。
これによって微妙な調整が可能となり、チューニングの精度も格段に上がります。
弦高調整をします。12フレットで1・2弦で3~4mm。3弦は4~4.5mm になるよう
ブリッジを削り調整します。
1フレットでの弦高は、奏者の好みもありますので数字で表すのが難しいですが、擦弦楽器の
場合弦は横振動をしますので、かなり低くてもビビリは発生しません。
今回の場合は、0.2mm程度に設定します。
全てのセッティングが完了したら、試奏です。
その前に、今回テスト用にエンドピンを取り付けます。
これで両足の負担が無くなり、ボーイングに集中出来ます。
ビオラ・ダ・ガンバはエンドピン無しで当時はよく演奏出来たものだと思います。
現代でも、モダンガンバにはエンドピンを付ければよいのにと思いますが、いかがでしょう!
金属フレット付の指板をもつ擦弦楽器は少なく(殆ど無く)、不安を感じながら試奏しましたが、
金属フレットが音色に関わる悪影響はあまりないのかなという感想です。
ではなぜアルペジョーネはあまり普及することなく消えてしまったのでしょか?
シューベルト作曲の名曲アルペジョーネソナタをオリジナル楽器で聞けないのは本当に残念です。
ひょっとしたら、あの時代では平均律の楽器の音楽は芸術音楽として認知されず、従って楽器の評価
も得られなかったのかなあと想像します。
いずれこのテーマにも朝鮮してみたいと思います。
音域は、1弦開放のEはチェロの1弦開放Aのより5度高い音になります。
金属弦の擦弦楽器のサンプルはなかなか無いですが、アルペジョーネの演奏をYOUTUBEで聞くことができます。
外人が演奏しているサイトがありまして、良く見ると古典音律フレットに見えますが詳細は不明です。
参考までにアクセスして閲覧して見て下さい。
弦長の長い割りには、細い弦を用いましたので、張力がチェロより低いため繊細なボーイングが求められます。
又、フレットが有る事で、高音域(20F以上)の音程も正確に発音出来るのがなにより楽しいですね。
充分に弾き込みをして、音色が整えたところでコンサートに使ってゆきたいと思っております。
4回にも分割して製作日記をアップしてきまして長い期間が経ってしまいましたが、最後までご覧
いただき有り難うございました。
完