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ケルナー馬頭琴 製作日記(3)

 今回は、指板にフレットを打ち込む工程を説明していきます。

まず最初に、ケルナー馬頭琴のネーミングについてですが、

これは、古典音律の一つであるケルナー音律でフレッティングされた馬頭琴から命名したものです。

 

この、音律という言葉ですが、

音律とは、「音楽に用いる音高の相対的な関係の規定方法」と定義されています。

これでは具体的に理解するのが難しいですね。

もう少しわかり易く言いますと、1オクターブの中に12個の音を数学的・物理的方法を用いて音程を定め

配列する方法とでもいいますか、楽音の方程式みたいなものですね。

 

考案した人物の名前をとり、純正律・ピタゴラス音律・ミーントーン音律・ベルクマイスタⅠ~Ⅲ音律

キルンベルガー音律・ケルナー音律・ヤング律・平均律などが良く知られた音律です。

 

ちなみに、現在の一般的な音楽シーンで用いられているが平均律でして、1オクターブの音程を12等分

してどの半音も全音も均等にしたもので、正確には12等分平均律といいます。

この平均律が一般的に普及し始めたのはドビッシーの時代、1865年以降と言われています。

 

それ以前に主に使われていた音律を古典音律といいます。

この古典音律は、オクターブ中に同じく12の音を配列しますが、その間隔は均等ではなく、

基音に対する、完全5度・完全4度・長3度・短3度・完全6度・長2度が極めて純正に近く

なるよう配列されたものです。

従って、12音の音程間隔は均等では無く不均等になります。

よって、古典音律のこと不均等平均律とも呼ばれています。

 

作られた歴史は古く、古代ギリシャのピタゴラスによって考案されたピタゴラス音律が始まりです。

幾人かの音律研究家や音楽理論家が古典音律を考案してきましたが、大バッハは自分自身で開発した

音律で調律したハープシコードを使い作曲・演奏していたと言われています。

これが、鍵盤楽器のための気持ち良い調律法  Wohltemmperierte Stimmung と呼ばれる

ものです。

この音律によって長短24調のどの調においても心地よい和声を得られる事を証明するために作曲されたのが

    Das wohltemperierte  Clavie    「 平均律ピアノ曲集 」    です。

 

この曲集が日本に紹介された時、ドイツ語の翻訳者が、wohltemperierteを平均律と訳した為、

バッハが12等分平均律の発明者と誤解されてしまいました。

明治維新後、西洋音楽を積極的に取り入れる運動がおこりましたが、すでにヨーロッパでは平均律

がスタンダードな音律として普及が始まっていましたので、古典音律の存在が日本ではほとんど知ら

れず今日に至っているのも無理からぬ事でしょう!

 しかし幾度かの古典音律復活ブームの変遷を経て、最近ようやく作曲時に用いられた音律で演奏

することが大切であると言う考えが少しづつではありますが浸透してきまして、非常に喜ばしく感じて

おります。

 

 これまでわたくしは、、両音律の優越を論じる事を目的とせず、両者の長所短所について実践を通して

吟味考察してきました。

その体験の中で目指したものは、古典音律(不均等平均律)がより簡易に使用され、美しい音楽シーンを

多くの人に体現してもらい事でした。

そのスキルの一つとして、古典音律で演奏出来る弓奏楽器が必要と考えこのフィドールを開発しました。

 

 ヘルベルト・アントン・ケルナーはバッハの用いた音律を長年研究した人で、バッハの音律研究では第一

人者と言われています。このケルナー音律のチューニングで演奏しているのがエンジェルスハープです。

ケルナー音律の和声の美しさはエンジェルスハープにより充分立証出来ましたので、ケルナー馬頭琴でも

美しい長3度やまろやかな旋律線で演奏出来ることを確信しています。

 

音律の話が長くなりまして恐縮です、製作工程の話に戻ります。

皆さん、12等分平均律で作られたギターの指板を見ていただくと、1弦から6弦に至るまで、一直線

のフレットが打ってある事に気付きますね。どの音からでも半音の間隔は同じになりますので、フレット

の位置も同一となり一直線の1本のフレットを打つ事になります。

 

しかし、古典音律では、それぞれの半音間隔が違いますので、フレットは一直線にならず弦毎にずれを生じます。

わたくしのHP内のケルナーギターのブログをご覧いただければ一目瞭然です。

今回の馬頭琴は3弦を有しますので、画像をご覧下さい。

 

 

ケルナー馬頭琴フレット

同じ位置にある弦や、3弦それぞれえずれている箇所もあります。

24フレット全域ではこうなります。

 

 

ケルナー馬頭琴全体画

 

 

平均律の場合、音域2オクターブで24フレットですので、24本の打ち込みで済みますが、

古典音律ですと、24×弦数(3)=72本になりまして、大変手間の掛かる工程になります。

どんな響きになるかわくわくしながらコツコツと作業を進めていきます。

 

 難関のフレット打ちが完了したら、レベリング調整します。

全フレットの頂点が一直線になるよう、治具を使って研磨して修正します。

この工程が不十分ですと弾いたときにビビリが生じますので重要な作業になります。

研磨しますと、フレットの断面が台形状になりエッジができますのでこれを半円形に

修正して点で弦に接するようにします。

この工程の精度が音色に大きく影響しますので丁寧に作業を進めます。

 

 トレベリングが終了したら、塗装工程にはいります。

塗装は、わたくしの場合オール刷毛塗りで行います。

最小限の塗膜厚で仕上げるには、スプレー塗装では不可能でして、どうしても刷毛で塗る

必要が有ります。

 

刷毛塗りのコツは、刷毛目を残さず薄く回数を重ね、均一な塗膜を形成することですが、

言うは易し行うは難しとの例えの通り、コツは経験で会得するしかありません。

 

 手工品弦楽器の塗装には、ラッカー・ウレタン・セラックニス・オイルニス等有りますが、

わたしは、低硬度の塗料で膜厚を極力薄く塗装するよう心がけています。

楽器の種類にもよりますが、木地の未塗装の状態の音色が経験上、塗装後したものよりも

美しかったと思いますが、保護と美観のために最小限の塗装をします。

個人的には、セラックアルコールニスがシンプルな工程で、着色する染料の色合も美しく

出て好みですね。

薄く塗り、光沢が出てくるまで1日1回とし、途中に研磨を入れながら15~20回位重ね塗り

をし、最後に仕上げの光沢調整をして終了です。

 

恐縮ですが、使用する塗料・工程表は非公開とさせていただきますのでお許しください。

塗装工程が終わりましたら、いよいよアッセンブリー(組立作業)です。

 

長くなりましたので、ここで一区切りしまして、アセンブリーは次回の日記でお話したいと思います。

 今回も通読戴き有り難うございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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